賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、1人4万円(所得税3万円+個人住民税1万円)の税金の減税措置(定額減税)が実施されます。給与計算の際に考慮する必要があることから、今回は給与計算担当者に向けて、定額減税の概要と、実施するために必要な準備としてまずは対象者の確認をしておきたいと思います。
2023年11月2日に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」において、「賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、デフレ脱却のための一時的な措置として、所得税と個人住民税の減税を実施する。具体的には、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、所得税3万円、個人住民税1万円の減税を行う」こととされました(出典:総務省「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集(第1版)令和6年1月29日」)。これが「定額減税」です。
この場合の「納税者」とは、所得税は2024年分の合計所得金額が1,805万円以下の納税者である居住者、個人住民税は前年の合計所得金額が1,805万円以下の所得割の納税義務者である居住者を指します。
また、「合計所得金額が1,805万円以下」とは、給与収入のみである場合には年収2,000万円以下(所得金額調整控除適用者は2,015万円以下)が該当します。
なお、所得税は2024年分、個人住民税は2024年度(一部2025年度)の実施です。
所得税の定額減税を実施するため、給与支払者は次の2つの事務を行います。
- 2024年6月1日以後に支払う給与等(賞与を含む。以下同じ)に対する源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除する事務(以下、月次減税事務)
- 年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う事務(以下、年調減税事務)
他方、個人住民税の特別徴収は、地方自治体が定額減税実施後の税額を通知してくれるため、給与支払者はこれに基づき天引きを行い、納付します。令和6年度分は7月から翌年5月の11ヶ月分での徴収となる点に注意しましょう。
月次減税事務の手順は、以下のとおりです。
- 控除対象者の確認
- 各人別控除事績簿の作成
- 月次減税額の計算
- 給与等支払時の控除
- 控除後の事務
上記手順のとおり、月次減税事務を行うにあたり、まず行うのは控除対象者の確認です。
控除対象者とは、以下のすべてを満たす人(以下、基準日在職者)のことを指します。
- 2024年6月1日現在、給与⽀払者のもとで勤務している⼈
- 給与支払者へ扶養控除等申告書を提出している人(いわゆる甲欄適用者)
- 日本に住んでいる人(いわゆる居住者)
つまり基準日在職者に該当しない人とは、例えば以下の人を指します。
- 2024年6月1⽇以後⽀払う給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用される⼈(扶養控除等申告書を提出していない⼈)
- 2024年6月2⽇以後に給与の⽀払者のもとで勤務することとなった⼈
- 2024年5月31⽇以前に、給与の⽀払者のもとを退職した⼈や、出国して非居住者となった⼈など
そのため、次のような人は控除対象者として、月次減税事務を行う必要があります。
- 合計所得⾦額が1,805 万円を超えると⾒込まれる基準日在職者
- 公的年金等で定額減税が実施される基準⽇在職者
これらの人は、最終的に年調減税事務又は確定申告で精算を行うこととなります。
なお、定額減税の適用は、控除対象者が選択することはできません。
その点もご注意ください。
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